宗興の本棚

第188週『恐れのない組織』

第188週
2021/5/2
『恐れのない組織』
エイミー・C・エドモンドソン著 野津智子訳

「心理的安全性」について、まず浮かぶのはプロジェクトアリストテレスです。本プロジェクトはGoogle内で「最高のチームをつくる要因は何か」を発見するために、2012年に発足しました。そして5つの要因を見出しました。

下記、Google re:Workのサイトより引用です。

 心理的安全性: 心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。

 相互信頼: 相互信頼の高いチームのメンバーは、クオリティの高い仕事を時間内に仕上げます(これに対し、相互信頼の低いチームのメンバーは責任を転嫁します)。

 構造と明確さ: 効果的なチームをつくるには、職務上で要求されていること、その要求を満たすためのプロセス、そしてメンバーの行動がもたらす成果について、個々のメンバーが理解していることが重要となります。目標は、個人レベルで設定することもグループレベルで設定することもできますが、具体的で取り組みがいがあり、なおかつ達成可能な内容でなければなりません。Google では、短期的な目標と長期的な目標を設定してメンバーに周知するために、「目標と成果指標(OKR)」という手法が広く使われています。

 仕事の意味: チームの効果性を向上するためには、仕事そのもの、またはその成果に対して目的意識を感じられる必要があります。仕事の意味は属人的なものであり、経済的な安定を得る、家族を支える、チームの成功を助ける、自己表現するなど、人によってさまざまです。

 インパクト: 自分の仕事には意義があるとメンバーが主観的に思えるかどうかは、チームにとって重要なことです。個人の仕事が組織の目標達成に貢献していることを可視化すると、個人の仕事のインパクトを把握しやすくなります。
(出典 Google re:Work 
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/define-team/Goolge)

心理的安全性について、本書は何度も読み返し、まとめたいと思う学術書です。
今回は特に印象深かった2のことを書きます。

1.心理的安全性についての誤解
「心理的安全性は、感じよく振る舞うこととは関係がない。」
「職場で『気楽に過ごす』という意味では、決してないのだ。」
「高い基準も納期も守る必要のない『勝手気ままな』環境のことではない。」
「正直かつ率直に話すことを可能にし、ゆえに互いに尊敬しあう環境において確立される。」

心理的安全性は、メンバーを擁護し、成果責任を問うことなく、何となくふわっとした印象をもっている方もいると思います。高い成果に向け、正直かつ率直に話せる関係性と捉えることがとても重要と考えます。

2.心理的安全性の作り方
子ども病院のジェリー・モラスCEOの例を出して説明しています。
(1)土台をつくる
仕事のフレーミングをすること。事故が起きるのはシステムの複雑さにはなく、能力不足という思い込みを変えてもらいたい考えた。医療事故が常に起きている統計などを示す。「調査する→研究する」「ミス→事故・失敗」と言葉を変えるなどした。
(2)参加を求める
スタッフから依然としてミスの報告が少ない中、「ミスがあったか」ではなく、「あなたの患者は、あなたが目指したとおり、今週ずっと、あらゆることにおいて安全でしたか」と問うように変えた。そしてクロスファンクショナルを「患者の安全運転委員会」のチームを作った。
(3)生産的に対応する
「責任を問われない報告」という方針を明確にした。実際に報告があれば感謝をした。

心理的安全性のレシピを読んでいて気づいたがことがあります。それは、リーダーが「あなたたちが悪いわけではない。システムが悪いのだ」という根本的な考えをもつことが必須ということです。
(1081字)

宗興の本棚

第187週 2021/4/24 『生き方革命』

第187週
2021/4/24
『生き方革命』
橋下徹 堀江貴文著 徳間書店

面白い尖った考え方をされる二人の著書。直感的に手に取りました。

二人から一つづつ、一番印象に残った点を挙げます。両方とも「学び」の分野でした。

「問題はスマホを手放せない子どもではなく、スマホをうまく活用している姿を見せられない大人にあるのではないか。」

堀江さんについては、この一文がささりました。まさにその通りだと思います。今年中1になる娘に親が示す必要を感じていたので、年初から自分は21:00にスマホを消す、将棋アプリもやらない、と宣言していました。自分でルールを作ることを含め親が示せば、スマホは効率的に学べる、世界も広がる素敵なツールとなります。

「『学ぶ力』を学んでほしいということになるだろうか。禅問答のような回答だが、これは子どもに限らず、大人になってからも重要な力だ。」

橋下さんについては、この一文です。学ぶ力を学ぶ、ということに共感はしていましたが、何か明確な学ぶ要素を打ち出したい気持ちもあり、自分で結論を出すのは保留していました。21世紀学び研究所の代表熊平美香さんが広めているOS21の考えに通じるもので、今回腑に落ちた感じです。

「学ぶべきことをわかっていること」が自分の強みであると橋下さんは言っていますが、ビジョンと興味関心に沿い学びたいことを3年計画ぐらいで考えてみようと思います。

その他に、二人の共通点でもある持論のアウトプットを常に行うこと。歯医者さんに行くこと(堀江さん)、お金のリテラシーを高めることも(橋下さん)取り入れていきたいと考えました。

最後に、この二人は根本的な価値観を示しており、そこが議論の出発点となっています。
堀江さん「自分の時間こそが、人生において最も貴重なリソースなのだ。」
橋下さん「人や企業を元気にするために原則は、高い流動性だ。」
二人の考えに触れる際、この軸を分かっておけば、とても理解がしやすくなると感じています。
(787字)

宗興の本棚

第186週『報徳生活の原理と方法』

第186週
2021/4/18
『報徳生活の原理と方法』
佐々井信太郎著 一円融合会刊

日課の一つに「師」とする方の書籍を読み、心を磨くことをしています。私淑しているのは二宮尊徳翁です。4年前ぐらいから毎日尊徳翁に触れるようにしています。

今回は尊徳翁の研究実践の第一人者である佐々井先生の著書です。報徳仕法をどのように、現在の生活に取り入れていくのか、より探究したく手に取りました。

今日の一文はこれです。
「現在勤労していること自体が嘉悦の生活である。勤労するということは、埋もれた徳を掘り出し、潜める徳を浮き立たせ、そうして勤労する人自身は適応した活動をして、生きているものの快さを味わう徳の発揚であって、それがまた先祖以来の業を受け継ぎ、あるいは現代文化から創造生活を開びゃくすることになる。」

徳に基づいてその特性を表現することは、勤労をすると同義になります。「勤労こそ人生の生きていく目的」と佐々井先生は言い切っています。そこまでの境地には立てていませんが近いものは感じており、仕事が楽しく死ぬときぐらいまでずっとしていたいと思っています。それは社会人になって以来、仕事を通していきがいややりがいが得られ、心から楽しいと感じるからです。

報徳生活をすることは、勤労をすること。難しいことではない。今のままで良いのだとあらためて感じました。

また、一切の衆生に特性があると尊徳翁は仰っています。勤労をすることでその徳に触れた方の徳性が現れ、また別の人に特が伝わり・・・という輪廻をしていく。尊徳翁は仕法の反対者の徳性をどう示現させるかを考え実行した結果、桜町の「全村民はそれぞれの天分の徳に基づいてその特性を表現すると、一家の貧困者なく、明治初年まで四十年間一人の犯罪者も出さなかった。」そうです。「自責」から更に進んだ考え方であり、新たな言葉を考えたいです。
(735字)

宗興の本棚

第185週『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』

第185週
2021/4/4
『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』
八木仁平著 KADOKAWA

今年のテーマの一つは「自己分析手法の深化」です。「フロー」の状態を生み出すには、心底(しんてい)からエネルギーが湧きあがる人生や仕事の目的を、自ら設定する必要があります。その目的はひらたく言えば、自身が「やりたいこと」です。真に「やりたこと」が設定できると「内発的動機の凄いやつ」が生み出されます。

真に「やりたいこ」に辿り着く手段として、自己の価値観を明文化するプロセスは重要です。より一層「内発的動機付けの凄いやつ」を生み出しやすくするための、「ワーク」や「問い」がないか。その第一弾として手に取った本です。

一番良かったのは価値観のランキングで、とても新鮮でした(そもそも本書の価値観の定義は「大事なこと」です)。通常、価値観の抽出ではします。そこにランキングをつけて整理するのは、より自分が重きをおく価値観が分かるので良い手法です。本書に沿うとランキングというより、進行表のような感じでも整理できます。

私の場合、価値観を出してみた後、ランキングをつけると、
①自尊→②思いやり→③受容・寛容→④希望・情熱→⑤自由・創造→⑥真理
となりました。

より具体的な解釈を入れると、
①自分の存在を尊び感謝をすると
→②人の役立ちたいという思いが溢れ
→③様々な価値観を受け入れることができ
→④より多くの人の役に立ちたい、つながりたいという希望や情熱がわき
→⑤我欲に囚われずに自由な発想で創造することができるようになり
→⑥真理にまた一歩近づく
という、ストーリのような整理の仕方ができました。
人生の目的が「真理(の探究)」にあることは分かっていたのですが、おおもとで今大切にしたいことは「自尊」であることに気づいたのは収穫です。

プログラムにランキングを上手く組み入れるイメージも湧きました。次のプログラムがとても楽しみです。
(752字)

宗興の本棚

第184週『超一流の雑談力』

第184週
2021/3/21
『超一流の雑談力』
安田正著 文響社

学術的な書物は真理に近づくにはとても良いのですが続けると疲れます。たまには楽な本をということで手に取った本。トータルで1時間かからずに読めるぐらいの内容でした。こういった気軽に読める本でも気づきはあるもので、二点程お伝えします。

まず一つ目は、「開口一番は『よろしくお願いします!』から」。無意識に行ってはいるつもりでしたが、この一言は互いの距離を縮め、場の空気を明るくする力があると感じます。例えば、プログラム開始時、個別に「●●さん宜しくお願いします」というとぐっと距離が近づく感じがして、入りがとてもよくなります。
さわやかな「よろしくお願いします」はよい空気をつくる火つけ役になる、と著者が言っているように商談、プログラム開始時などに毎回意識的に行いたいと思います。

二つ目は、「お会計のときに店員さんとひと言話す」です。私は外食をした際、店員さんに「おいしかったです。ありがとうございました。」となるべく伝えるようにしています。ただ、著者が言うように単においしかったではなく「もうひとひねり」ほしいところだと感じていました。お店のひとがちょっと嬉しくなるひと言をかけるのは案外難しいですが、意識してやってみたいと思います。

本書の全38項目に通底する考えは「相手の聞きたいと思う話をする」ことだと思います。「意図のない質問では会話はまず盛り上がらない」に象徴されるように、雑談力は感性と理性の両方が必要です。
(605字)

宗興の本棚, 熟読の本棚

第183週『モチベーション3.0』

第183週
2021/3/14
『モチベーション3.0』
ダニエル・ピンク著 大前研一訳 講談社

こちらも組織人事のプロの方に「モチベーションはこれがいいですよね」と薦めて頂いた本。再読になるのですが「名著は何度も読む」ということで、今の自分の印象的に残った部分をまとめます。

今回一番大きいのは、
「満足感を得るためには目標設定だけでは十分ではない。正しい目標の設定が必要だ」
ということであり、
エドワード・デシ教授、リチャード・ライアン教授等の追跡研究から導かれた結論です。

教授陣はロチェスター大学の卒業予定者からサンプルとなる学生を選び、人生の目標についてたずね、卒業後1、2年後に学生たちの様子を調査しました。

結果として、目的志向型の目標(内発的目標)の設定をしいた人は、それを成し遂げつつあると感じている人は、大きな満足感と主観的幸福感を抱き、不安や落ち込みレベルはきわめて低かったそうです。

一方、利益志向型の目標(外発的目標)を抱いていた人は、目標を達成している人も学生時代よりも不安、落ち込み、その他のネガティブな指標が「強まった」そうです。

これらより「ある目標を達成しても幸福に影響を与えず、実際には不幸を助長する」と結論づけられました。

ライアン教授の言葉を引用します。
『豊かさを求めて外発的目標を高く掲げる人は、その豊かさを手に入れる可能性が高い。それでも、彼らはやはり幸せではない。』
『高い目標を書考えて達成する人が、不安や憂鬱に取りつかれる理由の一つとして、良好な人間関係の欠如が挙げられる。金儲けや自分のことに精一杯で、愛情や配慮、思いやり、共感など、本当に大切なことにかける余裕が人生にないのだ。』

目標設定は人の意欲を高める重要な手段です。ただ、意欲を高めるには、利益だけでなく、目的と利益を志向するハイブリッド目標が組織内ではベストではないかと考えます。ただ、目的と利益両方を志向した目標を設定しても、利益志向は強くなりがちです。よって日常的に目的に立ち返る仕組みを作ることが必要です。
(805字)

宗興の本棚

第182週『ザ・ビジョン』(新版)

第182週
2021/3/7
『ザ・ビジョン』(新版)
ケン・ブランチャード、ジェリー・リン・ストーナー著 ダイヤモンド社

プログラムの課題図書である『ザ・ビジョン』の新版。読みかえしてみると、ビジョン創造のプロセスがリアルに感じられ、あらためて素晴らしい本と感じました。

旧版との大きな差異はなく、若干新しい項目が入たこと、「ビジョン創造の手引き」がついていることが特徴です。

本書は、ビジョン設定が難しく、やる気を引き出しにくい経理部のビジョンを例にしている所が秀逸だなと感じます。

「経理部の使命は、社内の人々に財務面での『安心』を与えることである。そのために正しい財務情報を、正しい人々に、正しいタイミングで提供する。
必要なときに正確な情報を提供し、あるいは助言することで、リーダーたちが賢い財務判断を下せるようにする。効果的な給与・会計システムを開発・維持する。法律で定められたあらゆる報告義務を正しく果たすことで、会社を守る。」
ここにはビジョンの構成要素の二つ、「有意義な目的」と「未来のイメージ」が入っています。

上記を「目的ステートメント」としていますが、この言葉がいいですね。ミッション(使命)ステートメントより、目的と言った方が、しっくりくる人も多い気がします。

今回一番強く思ったのは「価値観」に統一した方がよいことです。自組織の「目指す姿」をスタイル(行動指針)にしていたお客様もありますが、価値観の方がビジョン実現には役立つと感じました。

今回の経理部は「誠意、知識と専門性、説明責任、チームワーク」の4つにおいています。
価値観を明確にすると「人間の感情に訴える」「こだわるし、愛着がわく」「価値観に従って生きると誇りがもてる」「元気がでるし、わくわくする」ようになります。つまり「目的や未来のイメージを実現する原動力となる」わけです。

ちなみに、一つに絞った私の価値観=社是は「まっとうに誠実に」です。
(746字)

宗興の本棚

第181週『仕事に関する9つの嘘』

第181週
2021/2/27
『仕事に関する9つの嘘』
マーカス・バッキンガム、アシュリー・グッドール著 サンマーク出版

組織人事のプロの方に薦めて頂き手に取った本です。内容としては、組織人事についてよくある9つの考え方をデータ分析から喝破しているものです。

9つどの項目をとっても、じっくりと深めていくに値するものであり、時間を要するので、今回一つだけ絞ります。

最高の人材は「オールラウンダーである」はウソ、最高の人材は「尖っている」がホント。

筆者曰く、好業績チームを調べていくにあたり要因となる8項目を設定しました。その中でも業績や国籍にかかわらず、チームの生産性を予測するうえで「とびきり強力な予測因子」があり、それは

メンバー一人ひとりの「仕事で『強みを発揮する機会』が毎日ある」という感覚

とのことです。

ちなみにこの質問項目から「毎日」という言葉を取り除くと相関関係が消えるそうです。「自分の強みが仕事に役立っているという『日常的な感覚』こそが、好業績の必須条件なのだ」と筆者は言っています。

そもそも「強み」とは何でしょうか。

得意なことは能力に過ぎず、高い能力を発揮しても喜びがまったく感じられないものもあると筆者は言っています。確かに私にも思い当たる節はあります。

「活動の前は楽しみでしかたがない。活動の最中は時間の進みが速くなり、時間の境界が溶けていくような感覚がある。活動のあとは疲れ切っていて、もう一度気合を入れて取り組む気にはまだなれないが、充実感と満足感をおぼえる。」という筆者の表現が秀逸です。

まとめると、強みは「事前の期待感、最中の没入感、事後の充実感の相乗効果」があるようなもの。私にとっては受講者と触れる「プログラム実施」の時間がこれに当たります。

強みは能力というより欲求に近い、というのも納得できます。最終的に仕事に「愛」を感じる部分があるかということです。卓越したリーダーはメンバーに強みを認識してもらい、その仕事を愛してもらうことが重要なのだと認識し、大変参考になりました。
(791字)

宗興の本棚

第180週『GAFAに克つデジタルシフト』

第180週
2021/2/21
『GAFAに克つデジタルシフト』
日本経済新聞出版社 鉢嶺登著

体感値で日本企業のDXの本気度は、コロナ渦を機に一気に高まった気がします。私も人材開発の分野で、DXを進めていきたいという思いは常々持っており、具体的なイメージをつけたく手に取りました。

本書は、デジタルシフトに遠い経営者を対象とした本です。著者の鉢嶺さんが自社のデジタルシフトをした実体験をもとに、すぐにできるノウハウまで落とし込んだものとなっています。

二つのことを挙げます。

まず、クリエイターの重要性です。顧客が「目で見て」「指で触れて」「耳で聞く」領域を整えて体験価値を出せる人材。いわゆるUI・UX(ユーザーエクスペリエンス)を担当する人材で、主にはデザイナーを指します。

「クリエイターの力いかんで企業価値や業績が大きく左右される時代に突入したと言える。」「これはいくら強調してもし足りない。」と鉢嶺さんが仰ったこともあり、相当深く心に残りました。

LIFULLもかなり以前からUI・UXの重要性を見越して、クリエイティブ強化に舵を切っています。LIFULL LeadershipのDXにもクリエイターの方々の力は必須であり、どうしたらクリエイターの方々がより力を発揮できるか、実際に協業しながら探究していきます。

もう一つは、オプト社の金澤社長についてです。金澤さんは34歳でオプト社に就任し、同社をものづくりの会社にシフトさせていきます。当初懐疑的だった会長の鉢嶺さんに「3年黙って見ていてくれますか。3年以内に結果を出しますので」と断言し、デジタルエンジニアの大量採用(市ヶ谷Geek★Night)と活躍維持(自主組織オプトテクノロジーズ)を成功させます。

また「オプトをものづくりの会社にする」と方向性を決めて、全社員700名を1回10名~15名に分けた1時間×40回以上の座談会を実施。同時に、現場のエンジニアチームを治外法権とするなど、覚悟を決めデジタルシフトを実現します。

リーダーの定義は、「自らビジョンを描き、自他を一致団結させる人」と定義しています。「しっくりくる」「捧げられる」ビジョンが描けることでリーダーは誕生します。そこに危機感や切迫感などの強烈な感情が入ると、一気にスピードが増します。久々に自社を活かしビジョンを実現させる素晴らしいリーダーの実例に会い、心が揺さぶられました。
(953字)

宗興の本棚

第179週『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』

第179週
2021/1/31
『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』
リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著 東洋経済新報社

ずっと気になっていた本。ゆっくり自身の人生と照らしながら読もうと年末に購入しました。

本書は100年時代「厄災」ではなく「恩恵」を受けるための指南書となっています。

1.平均寿命データ
まず衝撃だったのが、平均寿命の予測データです。日本では2007年に生まれた子供は50%が107歳まで生きる。2014年生まれは50%が109歳まで生きる、とありました。ちなみに、私の世代1977年生まれは95歳~98歳です。100年時代が来ていることをリアルに感じました。ワンステージ60歳まで突っ走って燃え尽きる時代は終わりです。

2.イキイキした人生のポイント
本書から抽出したポイントは、以下の3つです。

①ステージを分ける:7年~10年ぐらいのイメージで細かくステージ分けをする

②若々しく生きる(活力資産):健康や家庭、友人関係を大切にし続ける

③変身を前提とする(変身資産):自分をよく知る、多様な人々と交わる、リフレッシュ(旅など)とスキルの学び直しを行うことなどを通し、自己認識と世界の見方を変更していく

②と③は当然連動します。そして③の旅いいですね。旅。

元々80歳、90歳になっても引退などせず、イキイキ仕事をしたいと考えていた私にとって、とても参考になる指南書でした。

最後に、「昔ながらの3ステージの人生では、人生の計画と自己内省はほとんど必要されなかった。確実性と予測可能性がある人生だったからだ。」とあります。100年時代だからこそ、自己を内省し、ありたい姿を描き続けることが必要と、強く感じます。
(646字)