宗興の本棚

第73週『伸びる子の育て方』

第73週
2018/12/22
『伸びる子の育て方』
漆紫穂子著 ダイヤモンド社

漆先生ともお会いする予定があり、本書を手に取りました。漆先生は、品川女子学院の中等部新入生が5名という危機的状況から、7年間で偏差値を20ポイント以上高め、入学希望者が60倍になるまでに導きました。また生徒が28歳の時から逆算したライフデザイン教育を推進し、企業とコラボレーションし課題解決型の授業も実施されています。
今回は親目線を含め3つ程、心に残った部分を列記します。

一つ目は、子供の成功体験を認めて、ほめることが、未来のために達成感や自信の「貯金」につながるとのこと。これは「自信貯金」と呼んでもいいと思います。どこの教育本にも承認の重要性は書かれているのですが「貯金」という概念が素晴らしいと思いました。会食に同席したLIFULLの井上さんからも「あまり出来がいい方ではなかったけど、何かできたときは母親がめっちゃほめてくれた」と仰っていたことで、承認の大切さを再認識しました。また、子供が壁にぶつかったときに、過去の成功体験を話すことで「自信貯金」が想起され、自己肯定感の芽が育つという話も印象的でした。最近4年生の長女への承認が少なくなっていた自覚があったので、意識的に承認をしていきます。

二つ目は、親が過保護・過干渉を卒業し、むしろたくさんの失敗と、もめ事をプレゼントすること。朝、中々起きられない子供と話し合い「毎朝1回だけは起こして欲しい、その後自分で起きる」と合意したところ、自分で起きてきたエピソードが載っていました。そして『子供がひとりで起きられる力を、いままで自分が奪っていたことに気づきました。』という保護者の言葉が印象に残りました。もっとかわいい我が子に「旅」をさせます。

三つ目は、自己肯定感はやり直しがきくということ。漆先生自身も苦い思い出をもち、それが自己肯定感を低めていたそうです。周りからは「え、あなたが?」と言われたそうですが、自己肯定感はあくまで自己評価=内的評価に起因するものです。漆先生はトライアスロンの大会に出場し完走したことで、自分の約束を後回しにしないことが達成でき、自己肯定感が高まったそうです。『自己肯定感はいくつになっても、育てることができるのです。私自身、それを手に入れることができたのは、つい昨年のことだったから』という言葉から温かさを感じます。自分自身との約束、私を守っていきます。
(973字)

教育心理の部屋

第46回「プログラム学習 6章 どのように教えるか」

第46回
2018/12/15
「プログラム学習 6章 どのように教えるか」

【まとめ】
個別学習の必要性を説いたのは、バラス・スキナーだ。彼はプログラム学習という学習方法を考案した(Skinner, 1954)。

プログラム学習は、道具的条件づけと、シェーピングの考え方を土台としており、5つの原理がある。①積極的反応②スモールステップ③即時確認(即時教科)④学習者の自己ペース⑤学習者検証の原理であり(本書では①~④の4原則となっている)、詳細は下記となる。

①積極的反応の原理:学習者がどの程度理解したかは、問題に答えさせて判断する。外に出してみることで初めて学習の程度が判明すると考えよ。
②即時確認の原理:学習者の反応の正否をすぐ知らせる。学習者は、自分の反応が正しかったかどうかを知った上で、次の反応を要求されるようにせよ。
③スモールステップの原理:学習者がなるべく失敗しないように、学習のステップを細かく設定する。失敗をするとそれが定着する危険性があると考えよ。
④自己ペースの原理:学習者個々が自分のペースで学習を進められるようにする。適当なスピードは学習者それぞれによって異なると考えよ。
⑤学習者検証の原理:プログラムの良し悪しは、専門家が判断するのではなく、実際に学習が成立したかどうかで判断する。そのためには、未学習の協力者に開発中のプログラムを試用してもらい、必要に応じて改善せよ。(熊本大学大学院 教授システム学専攻のHPより)

また、直線型のプログラムでティーチングマシンも作製された。プログラム学習の考え方が受け入れられた割には、あまり普及はしなかった。原因は、ティーチングマシンの開発が遅れたことにある。しかし、プログラム学習はCAI(Computer Assisted Instruction)と呼ばれるコンピュータ支援授業として再び脚光を浴びている。1980年代に入り、コンピュータ技術は飛躍的に進歩した。結果、学習者個人に対応して問題を提示する機能をもつソフトも作られ、CAIは多くの学校で利用されるようになった。

【所感】
プログラム学習はとてもインパクトのある学習法であり、タブレット等を使って、学習する原形がここにあったと気づきました。文科省のHPでも紹介されているぐらいですから、学習には有用なのだと思います。

咲心舎では試験前、個別演習形式になります。ただ、プログラム学習との違いは②即時確認③スモールステップになると思います。①積極的反応は問題を解かせることで解消していますし、④自己ペースは自分で計画を設定することで解決しています。⑤学習者検証もテスト類の点数で判断ができます。ただ、②即時確認については、紙の教材では塾生が自身で1問1問〇×をつけることがモチベーション的に難しく、ITだからこそ可能な部分だと思います。また③スモールステップも、ある程度の難易度の階段をつくることは行っていますが、1問1問で分岐をつくり完全にその塾生に合わせた形で設定するのはITならではの部分です。

将来的には生徒使用のITツールを考えていきたいと思っていますが、現段階でITツールを直接使用せずとも②③の原理を促進する施策を考えることは、個々の学力を伸ばすために有効だと思います。英克、浩子と共に考えていきます。
(1323字)

宗興の本棚

第72週『坂の上の坂』

第72週
2018/12/15
『坂の上の坂』
藤原和博著 ポプラ文庫

近日藤原さんとお会いする予定で、丁度良い機会なので以前から読みたいと思っていた本書を手に取りました。藤原さんの本は全部で5冊目。一人の作家として私が最も多く読んでいる方であり、それは思想背景が通底するからです。成長社会から成熟社会へ。藤原さんと私の思想背景はこの社会構造の変化にあります。

この変化に対応して、幸福になるにはどうすれば良いか。ポイントとなる所論を幾つか列記します。

『これをやっていればいい、というみんなが追いかける一般解や目標には、あまり意味がなくなってくる。自分が何を追いかけたいのかが問われてくるのです。そうなれば、一人一人は間違いなく「考える」ことを求められるようになります。すなわち自分で考えること、「哲学」が必要になってくる、ということです。』

『人が幸せになるためには、自分自身で「何が幸福なのか」を定義しなければならない。』

『みんな一緒に「上手く生きる」という高度経済成長的なライフスタイルから、それぞれ一人一人が豊かさを楽しむライフスタイルへの移行です。』

『自分なりの「幸福論」を自分自身で編集しつづけている人は、すでに幸せになっている。』

これらが共通提起しているのは「考える」ことではないでしょうか。「ライフスキル教育」の本質も自分の今を、未来を自分の頭で考えることであり一緒です。

ただ、これだけ藤原さんが言い続けていても、成熟社会という言葉自体を知っている人、行動する人は少ない印象です。言葉を知っている人は管理職研修でも3割ぐらい。それは成熟社会を実感する機会がないからだと思います。私の使命は少しでも「成熟社会」のリアルを感じ、考え行動するリーダーを増やす事。より伝わりやすくなるよう、冬休みにもう一度思想の整理をしていきます。
(732字)

宗興の本棚

第71週『勝ち続ける理由』

第71週
2018/12/9
『勝ち続ける理由』
原晋著 祥伝社

青学原監督の著書はこれで3冊目になります。前の2冊は初優勝の後、そして今回は連覇の後に書かれた本です。題名通り勝ち続ける秘訣をつかみたく手に取りました。まず、勝ち続けるための前提があります。それは強い組織を作ることです。これは原監督の前著にもあったステージ論です。青学も初優勝までに11年かかっています。その上で、ポイントは大きく二つあると感じました。

まず大切なことは「準備とこだわり」です。2015年全日本に負けた時、青学が猛練習したかといえばそうではなく「当たり前のことを当たり前にやろう」と訴え確認しただけだったそうです。『準備をきちんとやって、負けるのであれば、それは仕方のないことだ。しかし、準備を疎かにして負けたら悔いが残る。』とあるように、強いチームには余計なことは必要なく、計画通りに粛々と進めるのみということでしょう。結果、箱根駅伝を連覇しています。この中で「細かいことを言い続けること」が大切ともあります。準備をやり抜くには、細かいことを言い続けることが必要なのでしょう。

もう一つは大義をもって、ブレずに進むことです。2004年の就任当初に原監督が掲げた大義は「箱根駅伝出場」。次は「箱根駅伝優勝」。現在の大義は「陸上界を華やかにすること」です。目標に向かう大前提として、大義を掲げそれを実現するためのプログラムをつくり、実現していくスタイル。その際、大義が3割の人に賛同を得られるものであれば推し進めるそうです。

著書三冊それぞれ活用できる所がありました。特に運用を開始した目標管理シートはシンプルで効果が期待できそうです。ステージ論も視野に入れ、咲心舎を発展させていきます。
(698字)

教育心理の部屋

第45回「ジグソー学習 6章 どのように教えるか」

第45回
2018/12/1
「ジグソー学習 6章 どのように教えるか」

【まとめ】
グループ学習の一形態で、ジグソー学習がある。アメリカの社会心理学者エリオット=アロンソンが提唱した。

自分たちの住んでいる町について調べるという社会科の授業について、児童をいくつかの班に分ける(原グループ)。次に各班から1人づつ集まり、新たなグループをつくる(カウンターグループ)。カウンターグループの一つは、町の交通についての意見を、別のカウンターグループは経済などを調べ話し合う。その後原グループに戻ると、1人一人が各分野の専門家として情報源となり、班内の仲間同士で教えあうことになる。

ジグソー学習は、児童・生徒の人間関係を改善させるために考案されたが、人間関係の改善だけでなく、学習内容の理解や動機付けにも有効であることが明らかにされてきた。原グループにおいて全員が専門家であるため、全成員の自尊感情が高まり、学習成績の向上にも有効であると認められている。

【所感】
『ジグソー法が生まれた背景には、米国における人種統合政策がある。これによって相互理解が深まるどころか学校や地域で対立が生じ、黒人等の子供は学校で萎縮する結果となった。アロンソンは教室が競争的な環境であることがその原因だと考え、教室を協同的な環境に変えるために、相互依存構造を組み込んだジグソー学習を考案した。協同を推奨するのではなく、授業(学習課題)に構造的に埋め込んだところに特徴がある。』(ed-ict用語集よりhttp://www.ed-ict.net/)とあります。

咲心舎でも、授業一コマ使えば、これは可能かもしれません。例えば、地理の授業で、アメリカの地形、農業、工業に分け、それぞれ参考書をもとにカウンターグループで調べ意見交換をしたのち、原グループでそれぞれが意見交換をするイメージです。ただ、単に意見交換をしても、原グループの関係は良くならないかもしれません。また他のパートの知識習得もそこまで進まない可能性があります。協同作業がキーと感じるため、原グループで例えば「アメリカ調べ」の一つの紙を皆で完成させることが必要と考えます。
(863字)

宗興の本棚

第70週『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』

第70週
2018/12/1
『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』
雨宮寛二著 NTT出版

現在IT系のお客様にイノベーションをテーマにトレーニングを提供しています。メーカーのイノベーション事例を扱う書籍は多い一方で、IT系を扱うものが少ないこともあり、本書が当該IT企業様の参加者に有益な情報になると考え手にとった本です。

大きく二つの点の印象に残った点について述べます。

まず一つは、3社はイノベーション創出の出発点が優秀な人材の確保としており、採用を経営の最優先課題と位置付けていることです。グーグルは「スマート・クリエイティブ」と称する人材の獲得に注力しており、高度な知識、優れたビジネス感覚、ユーザーへの理解、高いコミュニケーション力等を要したスマート・クリエイティブが自由にものを考えられる環境づくりを設定しています、よって、極力フラット(意思決定者と直接やりとりできる)と機能別組織(横断的に人材や情報を使える)を二大方針にしているそうです。現実的にはこのような超有能人材の採用はどの企業も困難ですが、特別採用枠で破格の報酬での採用が考えられます。また、「個」が重要なことからも、既存社員からそのような「個」が出たときに、引き上げる仕組み(投資・提案制度など)が必要と思われます。

もう一つは、グーグルはオープンイノベーションであり、アップルがクローズイノベーションという対比です。ソースコードまでもオープンにするグーグルは、メーカーや通信キャリア、ソフトウェア開発者など強固なエコシステムを構築しました。結果『アンドロイドは7割近いモバイルOSの市場シェアを獲得』しているそうです。日本ではiPhoneが浸透している印象があり驚きました。実際に調べたところ、日本ではアンドロイド30.4%、iOS68.6%でしたが、世界ではアンドロイド71.9%、iOS19.6%となっていました(株式会社XERAのサイト)。オープンソースがクローズドソースを駆逐する。アップルは自社で質の高いものを提供でき、はじめは市場を席捲しましたが、徐々にグーグルが巻き返したそうです。NPOライフスにおいても、自社だけでなく他社とコラボレーションすることが大切であり、そのためにも資料やメソッドをどんどんオープンにしていきます。自分達からオープンにしシェアしていく事が重要であると再認識しました。
(944字)

宗興の本棚

第69週『オフィスのごみを拾わないといけない理由をあなたは部下にちゃんと説明できるか?』

第69週
2018/11/24
『オフィスのごみを拾わないといけない理由をあなたは部下にちゃんと説明できるか?』
島田慎二著 アスコム

経営理念×PDCAで会社経営をする。これは私の会社経営の基軸となる考え方です。千葉ジェッツを集客数日本一にした島田さんはこの考え方で経営をされています。前著より更に具体的にその経営手法を知るために手に取りました。

本書を読んで一番強く感じたことは、経営理念をより一層大切にし、メンバーの理解、伝達、体現度を着実に高めたいということです。経営理念は私達の存在意義です。メンバー一人一人がどんな業務に携わっていても、私達の存在意義である「自分の道を自分で拓ける人を創る」ことを理解し、語れ、体現できているか。これはまさに経営の最重要ポイントですが、私の努力不足で100点がつけられません。現在毎週のBミーツで理念を含め経営計画書の語り合いをしていますが、ミーツの改訂をします。同時に、経営理念や方針をより強く自然に自分のものにできるよう施策を充実させます。経営理念が真に腹落ちし自分のものになるにはある程度時間も要するので、腰を据えて取り組んでいきます。

次に、計画のステージ分けが印象に残りました。計画は3~5年の中期で考え、幾つかのステージに分けることが大事であると島田さんは言っています。例えば、年間集客数を1万人増やすとした時に、1年目は集客ターゲットの見極めに全力を注ぎ会場を埋める。2年目は会場のエンタメ性向上に注力し、満足度を高める。3年目はファンクラブの活動内容を充実させてリピーターを増やすといった具合に。これは選択と集中であり、絶対にできることを見極め徹底的にやりきるのが重要ということです。NPOの3ヶ年計画は立っており、あとは咲心舎事業の3ヶ年計画を英克、浩子と一緒に作っていきます。
(700字)

宗興の本棚

第68週『逆転のメソッド』

第68週
2018/11/17
『逆転のメソッド』
原晋著 祥伝社

青学、原監督のもう少し突っ込んだメソッドが知りたく手に取った本。結論としては、大半はサラリーマン時代などこれまでの経緯に割かれ、前著に重なっていました。新しい情報が乏しく失敗かなと思いきや、それでも心に残る部分があり二つ列記します。

今回一番参考になったのは、原メソッドの中核である目標管理シートの具体例です。本書には三代目山の神となった神野大地選手のシートが載っていました。たった1枚の紙に、目標が大きく書いてあり、あとは具体案が8つ箇条書きで書いてあるだけ。もっと複雑なものかと思いきや、本当にシンプルなものでした。原監督は練習日誌と合宿プロジェクトシート、試合結果報告書、一分間スピーチなど「自分で考え表現すること」を重視しています。咲心舎でも試験後の振り返りシートや、もっかんシートなど同様の取り組みを行っていますが、「シンプルに一枚にまとめる」事は大切だなと感じます。子供の処理力を鑑み、この辺り英克と浩子とも話して、シンプルな目標設定の仕方を探求していきます。

二つ目は、ステージ論です。
ステージ1「私とあなた」規則正しい生活を理解し、実践できるようになる段階。
ステージ2「1対多」ひとまとまりになり、監督が引っ張る段階。学年長制度を導入。
ステージ3「ホールディング制」オブラートに包みこむ指導する段階。
ステージ4「成熟期」指導者である監督が後ろにまわり部員たちの包み込むように指導する段階。

青学が初優勝できた理由は一言では難しいのは、11年の年月の格闘の歴史があるからです。そして「ステージ1のレベルでいくら自主性を尊重しても結果でないし、うまくいかない」と原監督は言っています。このステージ論は咲心舎の発展に二つの観点で取り入れていきたいです。一つは、学年毎の発展モデルづくり。中3の1学期には自分で目標が立ち、自学が完全にできる状態(ステージ4)を目指すなど。もう一つは、咲心舎自体の発展モデルづくり。中経に似ていると思います。丁度咲心舎の理念の再構築をする予定なので、ビジョンと共に皆で議論して考えていきます。
(864字)