教育心理の部屋

第9回「干渉」(1章 記憶力がいいとはどういうことか)

第9回
2018/2/12
「干渉」(1章 記憶力がいいとはどういうことか)

忘却がなぜ起こるのか。これは二通りの説があります。その一つに「干渉」という考え方があります。干渉は別のことを学習する為、前に学習したことを忘れる現象です。干渉には順向干渉と逆向干渉があります。順向干渉は、以前の学習のため新しい学習の記憶が妨害されること。例えば、英語を覚える時、私はMuneoki(ムネオキ)と最初はローマ字読みから入ったため、Makeを「マケ」Studyを「ストューディー」と読むなど修正に時間がかかりました。

活用として、中1数学の正負の計算で、カッコ外し前後では解く手順が異なり、混乱します。カッコ外し前とカッコ外しとの連関を研究し、干渉が起こらないよう指導していきます。もう一つの逆向干渉は、新しい学習のため、既に学習していたことの記憶が妨害されることです。例えば、通常の英語読みに慣れると、今度はローマ字読みがしにくくなります。SENDAI KARA KITA HITOWA「仙台から来た人は」など、私は若干ストレスに感じます。

逆向干渉について、よく実験的な証拠して用いられるのが、学習後睡眠をとった時の方が、覚醒していた時より記憶が長く保持されている事です。これは覚醒の方が、学習したことと関係のない余計な情報が入ってきて干渉が起こるからと考えられています。活用としては眠る前、重要なものの暗記を促していくことでしょう。
(573字)

宗興の本棚

第28週『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』

第28週
2018/2/12
『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』
駒崎弘樹著 ちくま文庫

社会起業家、駒崎氏の体験本です。現在37歳の駒崎氏は慶応在学時にITベンチャーの経営をする中「病児保育問題」を知り、社長を辞し、解決のためNPO法人フローレンスを設立。今や駒崎さんは社会起業家の代表格です。ビジョン実現に向け社会企業の実情やマネタイズ方法のヒント掴むため手に取りました。

マネタイズの仕方は少し掴んだ程度でしたが、決意を新たに出きました。NPOの役割は、行政や民間が担えない所の問題にリーチする役目です。ただ、いつまでもその分野が解決されない事が多く、その理由はマネタイズできず皆がパワーが注げないからです。そこで出てくるのが社会起業家。社会起業家の使命は問題にリーチする且つ市場を創ることです。当時子供が病気になった時預ける先はボランティアで小児科が扱う保育所ぐらい。駒崎氏は試行錯誤を繰り返す中、マネタイズする方法を編み出し、国や他のプレイヤーが追随し市場を創ります。

駒崎氏をはじめ志と開拓力をもった方々によって土台が築かれた結果、社会問題が解決されていきNPOや社会企業の認知度が高まりました。このような先達の方々の上で私は何をするか。「自分の道を自分で拓く」こと。自分が必要、したい思う事をするだけです。

私の今年の動きは3つです。
1.ライフスキル教育の技術を磨いていく
2.ICT分野の勉強を進め、ライフスキル教育との組み合わせを編み出す
3.マネタイズを学習し実践していく
(596字)

教育心理の部屋

第8回「忘却」(1章 記憶力がいいとはどういうことか)

第8回
2018/2/4
「忘却」(1章 記憶力がいいとはどういうことか)

エビングハウスの実験(1885年)では、記憶が忘却されることが分かります。まず、無意味な単語13のリストを繰り返し暗記し、ひとつの誤りもなくいえるようになるまで学習します。次に20分から31日間までさまざまな間隔をおいて再び完全に覚えるまでどのくらい学習する必要があるか調べました。

ただ、結果で表しているのは実は記憶量ではなく、再学習のしやすさであり、節約率という数値で表されています。節約率という考え方は、例えば13のリストを覚えるのに10分要し、20分後に4分要したとすると、6分節約したことになるので、6÷10=0.6(60%)という考え方です。

結果として、20分後58%、1時間後44%、1日後34%、1ヶ月後21%となっています。実は、1日後と1ヶ月後で再学習の負担はそこまで大きな差異がないと感じます。これでは私達が80テストを授業後すぐに行う為の学術的裏付けにはなりません。しかし私はこのグラフに表れてないことこそ感覚値で重要だと思っています。それは、再学習後の節約率であり、具体的には各間隔で再学習したあと再々学習した時の節約率です。おそらく記憶後すぐに再学習した方が、その後の節約率が高い=定着が良いと感じています。再学習後の節約率、ここの学術的エビデンスが欲しいところですが、私達はこのまま80点テストの合格率を大切にし、進んでいきましょう。
(581字)

宗興の本棚

第27週『「普通の人」が上場企業をつくる40のヒント』

第27週
2018/2/4
『「普通の人」が上場企業をつくる40のヒント』
井上高志著 ダイヤモンド社

恩師であるLIFULL(前ネクスト)の井上さんが、2006年東証マザーズ上場時に出された本です。先日井上さんが「世界平和」を語る姿を見て、今の自分に大切なものを確認しようと手にとりました。

読み返す中で、目に留まった所は、井上さんも多くの方に援けられてきているという事です。創業時、叔父さんが事務所を無料で貸してくれた。資金ショート時に、前職の先輩が100万円無担保で貸してくれた。高校時代の同級生が技術代表として入ってくれた等。

40のヒントの中で、これら「つながり」を表すものは4つ出されています。「よき理解者を増やすには」「あなたには協力者何人いますか」「損得勝ち負けより大切なものは」「『縁』の大切さを感じたことはありますか」。共通するのはビジョンを語る、意志を伝える、信頼を
積み重ねる、という事と感じます。

昨年「夢・ビジョン」を語ってない(語れない)1年でした。だから私は苦しみました。今年からこれまで以上に「夢・ビジョン」を語る機会を「自ら」創っていきます。月3~4回外部の方と会食などをし語っていきます。

一方で、リーダーが社内にすべき2つの事として、「ビジョンを共有する」「戦略を練り、戦術を示す」とあります。外にビジョンを語るだけでなく、仲間の社員達にビジョンを共有し続けることが大切とあらためて思います。具体的には毎週月曜日のBミーツの内容を少し変更し、ビジョン共有を入れていきます。
(599字)

教育心理の部屋

第7回「意味づけ」(1章 記憶力がいいとはどういうことか)

第7回
2018/1/27
「意味づけ」(1章 記憶力がいいとはどういうことか)

フランクスの実験(1982年)では、記憶における意味づけの有効性が見て取れます。
はげた男が新聞を読んだ。(1)
はげた男が帽子を買った。(2)
上の二つの文章だと、(2)の方が意味的な関連性があり、覚えすいです。
さらに、
はげた男が、帽子のセールをさがすために、新聞を読んだ。(1‘)
という形にし、(1)の意味的関連が薄いものと、(1‘)のように長くなっても意味的関連性が強いものを子供達に沢山与え記憶してもらう実験でした。

結果は、学習が進んでいる子と遅れている子に、再生率と学習時間に分けて示されました。再生率については(1)は遅れている子が悪く、一方で(1‘)のような意味づけありの文章の再生数は、進んだ子と差異はあまりありません。学習時間については、遅れた子は(1‘)の意味づけありの方が長くなっていますが、進んだ子は逆に(1)の意味づけなしの方が長くなっています。

ここから、(1)について、進んだ子は自発的に意味的な関連性をつけるような工夫をしているため学習時間は長くなっていますが、再生成績は良くなっています。これに対して遅れた子は、意味づけの有無の違いに気づかない。結局、どちらも単に丸暗記をしようとするため、意味づけられてないテキストの成績が悪い。よって、よりよく記憶をするには、主体的に意味的な関連付けが重要と分かります。

咲心舎においても、英語メソッドは意味→音読→書きの順番は効果的であることが確認できました。また、全教科各単元の意味の理解が判明するような80点テストにするのが良いと思いました。

宗興の本棚

第26週『子供が夢を確実に叶える方法』

第26週
2018/1/27
『子供が夢を確実に叶える方法』
伊藤美乃り著 スターツ出版

卓球のみう・みまの一人、伊藤美誠選手のお母様が書いた本です。美誠選手は「2016年オリンピックに出場」「2020年で個人・団体で金メダル」という目標を掲げ、2016年は銅メダルを獲得しています。実来と宗真が夢を叶える支援に参考になると思い手に取りました。

私が驚いたのはまずその練習量です。「世界チャンピオンになる」という夢の為に、美誠選手は3歳の時は平日3時間。4歳からは1日7時間以上毎日お母様と練習をしていました。内容は基礎練習中心。美誠選手は「嫌だった。母は『鬼』だった。」と回顧しています。この特訓は12歳まで続きます。正直言葉が出ません。子供の頃から睡眠時間5~6時間という、やや異常な状態です。しかし実来も宗真も、そして僕も大成するには、どこかでこのクラスの「圧倒的努力」が必要なのでしょう。

また反抗期の対応も印象に残りました。実来も宗真も反抗期は来ます。親というだけで「拒否」であり、美誠選手も小6から始まったそうです。お母様は3ステージ、本気で傷つく、本気で話し合う、笑い飛ばす、で対応していました。まず本気で傷つく。その言動が他人にどれだけ不快な思いをさせるかを分かって欲しいと。要は全身全霊でつきあうことが大事なのです。

最後に「世界チャンピオンになる」は美誠さんが自分で決めた事です。お母様から「なりなさい」と言われたことがないそうです。やはり自分で決める。これが大事です。

教育心理の部屋

第6回 「リハーサル 1章 記憶力がいいとはどういうことか」

第6回
2018/1/20
「リハーサル 1章 記憶力がいいとはどういうことか」

情報を脳の中で繰りかすことをリハーサルと言います。リハーサルには2種類あり、短期記憶の情報を維持する「維持リハーサル」と、短期記憶から長期記憶に転送する「精緻化リハーサル」があります。維持リハーサルは単に言葉を頭の中で繰り返すようなことです。精緻化リハーサルは、関連付けがされるもので、たとえば「うみ」なら海のイメージを浮かべたり、「うみ」から「山」を連想したりするものです。

このことからも、やはり意味付けがされないまま暗記してもすぐに記憶から飛ぶのです。英語や社会、理科も意味を理解した上で暗記しないと、維持リハーサルにとどまり、学力には結びつけません。また、精緻化リハーサルの中でも、自分のことと関連付けられたものは、特に記憶がされます。例えば、「あかるい」という言葉を覚えるときに、3つの質問をします。これはひらがなか、カタカナか?この意味は?あなたに当てはまるか?この時、最後の質問をされた時の方が一番記憶されやすいです。

ロジャース(1997)の実験で、処理の違いによる平均再生回数が、自己、意味、音韻、形態の順になっています。自己は意味の2倍の再生回数です。私達の英語メソッド意味→音読→書きは正しいのです。ただ、更に塾生自身と結びつける工夫がされると、更に記憶の定着化が図れます。この辺り皆と探求していきたいです。
(567字)

宗興の本棚

第25週『人を育てるアドラー心理学』

第25週
2018/1/20
『人を育てるアドラー心理学』
岩井俊憲著 青春出版社

人材育成の専門家としては押さえておこうと考え手に取った本。特に最強のチームはどう作られるのかという所に興味がありました。

全体感としては、アドラー心理学のベースにあるのは、自己受容、信頼感、貢献感。つまり開放型マネジメントと理解しました。ただ、内容は、数々のコーチングの本などで叙述されている事とほぼ変わらず斬新さはありませんでした。逆にこのアドラー心理学が脚光を浴びるということは、それだけ旧来の統制型マネジメントが根強いとも感じます。

そうは言っても取り入れたいことが出てきました。下記2つです。

まず一つ目は、相手の私的論理を重視する。おそらくこれがアドラー心理学のベースの行為と考えます。部下も塾生も自分なりの考えや価値観があり、ここが分かりあわないと出発しません。よって聴くことが重要であると思います。

二つ目は、共同体感覚を高めること。つまり居場所があるということ。これは私が想っている子供の「第三の場所」になると同義です。英克、浩子にも共同体感覚を。塾生達にも共同体感覚を持って欲しいと感じます。

第三の場所という最高の場所作りのためにも、本書にあった最強組織の4つの手法を皆で実践していきたいです。1.「ヨイ出し」で勇気づける。2.「プロセス重視」で勇気づける。3.「失敗から学ぶ姿勢」を身につける。4.「感謝」で勇気づける。これを私達同士も塾生にも行っていきたいと考えています。
(592字)

宗興の本棚

第24週『辻井伸行 奇跡の音色』

第24週
2018/1/14
『辻井伸行 奇跡の音色』
神原一光著 アスコム

一流のピアニスト辻井伸行さんの歩みを知りたくて手に取った本。

YouTubeで彼の演奏を初めて聴いた時感涙しました。正直盲目でよくぞここまでという個の尋常ならざる努力に対して感動し、人の可能性に震えが出ました。そして、何回かみるうちに、辻井さんの素晴らしい音色自体に感動するようになりました。

辻井さんは、14歳の時ショパンコンクールの批評家賞を、そして20歳の時ヴァンクライバーン国際コンクールで優勝します。盲目というハンデをおった彼が一流になった傍には、やはり優れた指導者がいました。それが恩師・川上昌裕さんです。川上さんは自らピアニストとして東京音大を主席で卒業し、世界的ピアニストを目指し、ウィーン市立音楽院に進学。その後挫折を経験しながら、指導者として東京に帰った際、辻井さんと出会います。目の見えない辻井さんに対し、譜読みテープの作成をはじめ魂の指導で6歳から18歳高校卒業までの12年間共に歩みます。

私は辻井さんというより、川上先生に感情移入しながら読んでいました。ピアニストといいながらアルバイトで生計を立てている自分。東京に帰るか夢を追い続けるかの時に、このままでは趣味の域を出ない。もっと人の役に立つものにしなくてはと東京に帰る決意の所は、苦悶が私自身と重なりました。

ちなみに辻井さんの才能はポジティブ思考(明るさ)。何が起きても停滞も後退もなく前進と捉えられるのだそうです。
(596字)

教育心理の部屋

第5回「テスト不安 1章 記憶力がいいとはどういうことか」

第5回
2018/1/8
「テスト不安 1章 記憶力がいいとはどういうことか」

ダークは1988年にテスト不安に関する実験を行いました。テスト不安の高い人と低い人に分けた上でテストをします。テスト内容は、刺激文を2つ読んだ後、問題の文の正誤を答えるものです。内容は2タイプあり、http://muneoki-yoshida.com/wp/wp-admin/post-new.php
タイプ1は、
刺激文1 トランペットが演奏された
刺激文2 その演奏はやかましかった
問題   トランペットは静かだった。
と直前の文に答えが関係するものです。
タイプ2は、
刺激文1 男はくぎを打った。
刺激文2 彼はとても疲れた。
問題   男はかなづちを使った。
と、最初の文に答えが関係するものです。

タイプ1は、刺激文1を記憶する必要がないのですが、タイプ2は刺激文1を短期記憶に保持する必要があります。結果として、タイプ1の課題は、テスト不安の高低とも反応時間は変わりませんでした。ただ、タイプ2の課題は、テスト不安の高い人が、反応時間が長くなりました。ここから、テスト不安の高い人は「失敗したらどうしよう」など課題と関係のない考えのため短期記憶が圧迫されると考えられます。

長期記憶を書庫とすれば、短期記憶は閲覧室の机のようなものであり、情報は短期記憶に引っ張り出す必要があります。私達としては、テスト時に塾生に見たことのない問題にあたっても冷静に対応する訓練を積んでもらう必要があります。特に中3に対しては、ひろきなど、落ち着くための対処法など事前に個々人に決めてもらい、過去問に取り組み訓練することが必要かと考えます。
(596字)