宗興の本棚

第148週『無敗営業』

第148週
2020/6/22
『無敗営業』
高橋浩一著 日経BP社

日経ビジネスの広告に何度も掲載されている本書。営業テクニックを体系的にまとめた本はあまりないため、あらたに営業組織を築く際の材料になるかと思い、手にとりました。

4つのことが印象に残っています。

一つ目は、お客様にとって営業は「ズレない」=「わかってくれる」ことが何より大切ということです。私は、初回や二回目など提案前の場面では、とにかくその企業様を理解することに努めます。お客様が真に目指したい姿や、深層の悩みが分かれば、的確な提案ができ信頼を得ることができるからです。「わかってる営業」もしくは「ズレない営業」になれるかどうか、営業部隊の合言葉にしても良いぐらいです。

二つ目は、営業状況の種類分けです。著者は案件や商談を「楽勝・接戦・惨敗」の3つに分けています。そして、強い組織に至るには「接戦」を勝ち抜く筋力をつけることが必要というのは同感です。案件を常に3つに分け、接戦の戦略を練ることや、惨敗案件をかぎ分けることはとても有用であり、また提示されていた既存顧客リテンションチームにも、新規顧客開拓を課すことも組織全体の営業力を高める良策だと考えます。ただいくら社内用語であれ「楽勝」というのは、お客様に失礼です。社内での使用言語が社員の考えや行動を規定するため、私であれば「相愛」という言葉を使います。

三つ目は、「決定の理由」ではなく「決定の場面を問う質問」を聞くというのは、是非取り入れたいです。「どんな場面で、心がぐっと動いたのでしょうか」という質問はいつ・何が必要だったかをより具体的に浮き上がらせると感じます。

四つ目は、この著者の「執念」の凄さです。著者は12年前あるIT系企業に対する20社の大型コンペで敗れました。どこが受注したのかお客様から教えてもらえなかったのですが、3ヶ月色々なツテをたどり、敗れた相手を見つけ出し直接会いにいったそうです。また、以前は失注したとしても「100%決定かどうか」「再提案させてくれないか」と必ず粘ったそうです。ある分野でプロとしての立ち位置を確立している方は、こういった「執念」があるのではと感じました。
(878字)

宗興の本棚

第147週『一番になる人』

第147週
2020/6/15
『一番になる人』
つんく♂著 サンマーク出版

今年のテーマである筆力強化。筆力を高めるには、根本のメッセージや、構成だけでなく、「人の心を動かす言葉」が必要であることを知りました。おもしろい言葉、目を引く言葉、刺さる言葉、そういった言葉のテクニックが詰まった本ということで、オススメされていたのが本書です。学生時代、モーニング娘。のファンだったので、つんくさんは知っていましたが、まさかつんくさんの本を手に取るとはという感じです。

【読者として】
特に響いたのは、「売れる人を徹底的に分析する」ということです。

「売れなかった二年間。僕は必死で『売れる音楽とは何か』を研究しました。」とあります。150万部以上売れたコンマリさんを世に出した名編集者、高橋朋宏さんが「ベストセラーを徹底的に分析した」と仰っていたことがすぐに頭に浮かびました。また、綾香さんやYUIさんを世に出した音楽プロデューサー西尾芳彦さんも、ヒット作を徹底的に分析したと仰っていました。やはり売れるものを生み出す方々は、売れているものを分析し、独自の「ヒットの法則」を編み出しています。

【書き手として】
伝えたいことを、伝わりやすく書く力をひしひしと感じました。まさに「人の心を動かす言葉」をもっている方だなと感じます。身に着けたいと思う点は二点です。

・オリジナルかつ目をひく言葉
「教室内ニッチ」、「勝負パンツをいつもはいておく」、「『四位』こそが大衆のなかの一位」、「エネルギー業者」、「サクセスストーリーはピンチ―ヒッターから」等。これだけで「おもしろそう」となりました。

・身近でリアルな言葉
つんくさんの歌詞は、非常に身近でリアル。いつも秀逸な歌詞だなと感心していましたが、「ヒントはいつも自分のいちばん近いところにある」とあり、その謎がとけました。

ちなみにお気に入りの歌詞は、
「選挙の日はうちじゃななぜか、投票行って会食するんだ~」(モー娘。『ザ・ピース』)
です。あまりこういう家庭はなさそうだけど、リアリティがあり絶妙です。

この本でも、「売店のおばちゃん」や「おしゃれな中学二年生」、「『チャック空いてるで』と言われるやつ」「我が家の手伝い」など、誰でもイメージができる「身近な」シチュエーションが頻発します。

要は、読者に寄り添い言葉を生み出すことです。プロは凄い!
(945字)

週の風景

060 一旦の区切り

先週はプログラム制作週でした。この5ヶ月で入れてきた知見を、新コンテンツとしてどんどん投入した感じです。参加者の方々がどんな反応するか、ワクワクしますね。

さて、1年半ぐらい続けてきた週の風景ですが、今回で毎週のUPは一旦お休みにします。

というのも、これまで本ブログは「ライフスキル教育」を主題にしてきましたが、3月末で塾を譲渡、NPOの活動も休止し、子供向けライフスキル教育に一旦区切りをつけました。そのままブログは続けていましたが、本ブログの風景も区切りをつけることにしました。

これまで読んで頂いた方々に、心から感謝しております。
本当にありがとうございました。

ただ、これで終わりではなく、現在ライフスキル教育にかわる、新たなコンセプトと仕掛けを策定中です。その時まで英気を養い刀をしっかり磨いてまいります。

また「宗興の本棚」は続けていきます。何かしら皆様のお役に立てば幸いです。

多くの方々に支えられてここまできました。感謝は尽きません。
重ね重ねになりますが、本当にありがとうございました。

宗興の本棚

第146週『深夜特急1 香港・マカオ』

第146週
2020/6/7
『深夜特急1 香港・マカオ』
沢木耕太郎著 新潮文庫

コロナで外出自粛が続く中、ふと新聞に「今だから読みたい本」なるものが載っており、そこの上位にあったのが本書です。この本を読んで旅に目覚めた人は数知れずと言われる超有名本。いつものビジネス本ではなく別角度からの新鮮さが欲しくて、新聞に促されるまま手に取りました(若干ネタバレあります)。

この本が、なぜ人々をこれほど魅了するのか。

それは「真剣に酔狂なこと」をしているから、という一言で表されると思います。

「ほんのちょっぴり本音を吐けば、人のためにもならず、学問の進歩に役立つわけでもなく、真実をきわめることもなく、(中略)まるで何の意味もなく、誰にでも可能で、しかし、およそ酔狂な奴ではなくてはしそうにないことを、やりたかったのだ。」と著者は言っています。

酔狂とは、辞書で引くと「普通は人のしないようなことを、好んですること。ものずき。」とあります。この本の中毒性は、著者が酔狂を追い求めたことにあるのだと思います。

1巻で印象に残った酔狂な場面が3つありました。

まずは、ニューデリーの鉄道駅の旅行案内所へ行った場面。「アムリトサルにバスで行きたい」と著者がいうと、係員に鉄道で行けと言われる。押し問答を繰り返し、そのうち鉄道の方が「ベターで、カンファタブルで、ラピッドで、セーフティーだ」と係員がむきになり大声でまくし立てるように言う。それでも筆者が「でも、バスで行きたい」と主張します。

次に、香港についた初日、いかがわしい宿に泊まる場面。「面白そうだな、と思った。このいかにも凶々(まがまが)しくいかがわしげな宿の窓からは、絵葉書的な百万ドルの夜景も国際都市の活気あふれる街並みも見えなかったが(後略)」
「理性的に判断すればこんな宿に泊まるべきでないことは明らかだ。危険を覚悟しなくてはならない。(中略)とにかく、ここには私の胸をときめかせる何かがある。」

最後に、マカオでカジノにのめりこみ、負けても「どうしても取り返すのだ・・・」と、あきらめないでしつこく勝負にいく場面。どんどん負けが込んでいく中で、持ち金が減って旅が続けられないぐらいまでに。しかし、最後にカジノの法則を読み、負け分を取り返します。

特に、最後のカジノの章は、バカだなと思いました。無一文で旅を続けるのだろうかと、読んでいてハラハラしました。しかも、負け分を取り返し終わりかと思ったのですが、まだありました。

「香港に帰ろう」とホテルに戻って荷造りをするものの、船をまっている時間に、「得体のしれない荒々しい感情に衝き動かされそうになった。」「やろう、とことん、飽きるか、金がなくなるまで・・・足は聖パウロ学院協会に近い船上カジノへと向かっていた。」と、再度カジノで勝負をします。

読んでいて、絶望に近い感覚におそわれました。勝てるはずがないのに、完全にバカだなと。あきらめに近い境地でしたが、どんどんページは進みます。

そもそもデリーからロンドンへバスで行く事自体が酔狂です。日常からかけ離れ、自由に普通ではやらない体験をする。少し危険を伴うようなこれらの体験が、自身の中にある冒険心や解放の欲求に触れてくるのでしょう。

どこかで2巻を読み、いつかのアジアの旅に胸膨らませたいです。
(1322字)

週の風景

059 家族で映画ベスト3

ありがたくも忙しい日々は続いています。
先週は月曜日に嬉しい連絡が。開始延期になっていた携帯代理店様の店長マネジメント研修を、7月から開始したいとご連絡を頂きました。

決まっていた研修は4月から全てオンラインで再開・開始しておりました。あとは店舗系の会社様だけ、店舗が休業か短縮営業ということもあり、開催が出来ていませんでした。「ブルームウィルさんの研修は本当に大切で、今年も受けさせたいんです。」という部長のお言葉は本当にありがたいです。今年も皆様の成長と収益向上に、力を尽くします。

さて、今日は家族ネタを書きます。仕事だけでなく、少しづつ家族ネタも載せていこうかなと思います。

他の家庭でもそうだと思いますが、我が家ではコロナで自粛の3ヶ月は子供との共同活動が増え、家族の絆が深まった期間でもありました。
通常時とは違う活動の一つに、週2回の映画鑑賞会があります。基本私と相方が観ておらず、アニメ以外、エログロなしのものを探しながら計25本観ました。

娘(小6)のベスト3
1位ギフテッド
2位ワンダー
3位プーと大人になった僕

穏やかでしっとりしたものが好きなようです。

息子(小3)のベスト3
1位キングダム
2位グーニーズ
3位チャーリーズエンジェル

はい、全てアクション系です<笑>。4位はおそらく『ベスト・キッド』か『アベンジャーズ』。

ちなみに、二人のワースト1位は・・・
『今を生きる』
です。かなりぐっとくる名作なんですけどね。
バッドエンド的なものはまだやはり受け入れが難しいようです。

相方のベスト3は、
1位ギフテッド
2位ワンダー
3位ドライビングミスデイジー

ワンツーが娘と一緒というのは一体??

最後に、私のベスト3は下記です。
1位シザーハンズ
2位最強のふたり
3位ギフテッド

1位と3位はボロ泣きでした。

作品選定で役立ったサイトを載せておきます。

「親子で楽しめる!子どもにおすすめの映画10選(ジブリやディズニー以外)」

親子で楽しめる!子どもにおすすめの映画10選(ジブリやディズニー以外)

「子どもが13歳になるまでに見せておくべき映画55本」
https://eiga.com/news/20140710/2/

緊急事態宣言アゲインで学校が再休校にとなったときなど、是非ご一緒に観てみてください。

宗興の本棚

第145週『「超」文章法』

第145週
2020/5/31
『「超」文章法』
野口悠紀雄著 中公新書

今年の読書テーマの一つは「筆力強化」。書くという行為は、これから先も増えていくことを見越し、今年のテーマとしました。その第一弾が本書です。

結論として、第1章「メッセージこそ重要だ」がとても響きました。この章だけでも十分財産となりえるものと感じます。

第1章の主張は、「メッセージを明確化せよ」ということです。著書は「メッセージが8割の重要性をもつ」と言っていますが、伝わりやすい文章の核心はここだと感じます。しかも、メッセージは質が問われます。メッセージとなりえるための条件で、メッセージが、ひとことで言えるか、ためになるか、面白いか、の3つが響きました。質の高いメッセージとしてあがっていた例は「猫は笑う」です。おっ?と意外性があり面白く、また雑談のネタの一つとしてためになりそうです。

更に、筆者はメッセージが見つかったときも、読者にとって「ためになるか」「面白いか」と何度も自問自答を繰り返すことを勧めています。要は、「謙虚になれ」ということです。筆者と読者の間には、常に書きたいことと読みたいことの乖離があり、筆力が素人レベルを脱するには、この大河を超えることが必要と感じました。

私の場合、日常で書くのはメールとブログになります。
メールは自分の武器となるので、時間をかけ日頃推敲を重ねた後送るようにしていますが、メッセージを明確にしつつ、宛先の方にこれが伝わるか、ということを謙虚に考えていくこと。この姿勢を続けていきます。
またブログについても、毎回1つメッセージを考え、伝わるかどうか謙虚に考えていきます。

他、表現方法としては、文章は削る、削る、削るで読みやすくなることを取り入れます。つい冗長になりがちですが、思い切って削ることを心がけます。

また、抽象的な概念に名前をつけることもチャレンジしていきたいです。著者はベストセラー『「超」整理法』で、「神様ファイル」「君の名はシンドローム」など抽象概念に名前をつけ、「こみいった概念を上手く伝えるのに役立った」と言っています。まずはユニークに命名されたものにアンテナを張り、収集するところからです。
(876字)

週の風景

058 そもそもブーム

先週もオンライン研修3回、新規事業企画、そしてお客様や友人とのオンラインMTGなど、忙しくしておりました。

研修については3月は0回でしたが、4月からオンラインで再開して頂き、これまでキャンセルは1件もなく、本当にありがたい限りです。

企業活動も在宅ワークに慣れ、リズムが出てきたようで、GW明けからの動きが加速していると感じます。そして、4月は守りが主体だったと思いますが、この2週間でお話をした経営者の方々は皆一律に「攻め」をされています。サービスの自動化に舵をきる、人事向けオンラインセミナーを開く、新規事業を形にする、新中経の策定に入る等々。悲壮感などなく未来を見据え、どんどん動いています。私も負けずに熱く動いていきます。

最後に、コロナ後「そもそもブーム」が起きないかと勝手に思っています。

そもそも通勤って必要だっけ?
そもそもアポイントって必要だっけ?
そもそも資料って必要だっけ?
そもそもオフィス自体必要だっけ?

をゼロベースで考えると同時により深く、

そもそも何のために働いているのか?
そもそも何が自分はしたいのか?
そもそもどんな人生を送りたいのか?

など、ゼロベースで生き方、働き方を考えるようなブームが起きないかと思っています。私がより多く輩出したい「自分の道を自分で拓ける人」は、日常から離れ、自身の人生を根本的に見つめることスタートだからです。未来は希望しかない。今週も走ります。

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第144週『職場学習論』

第144週
2020/5/24
『職場学習論』
中原淳著 東京大学出版会

「成長する職場とは?」

この問いの解を探求することで、研修参加者の部課長に、成長する職場づくりのヒントを伝えられると考え、手に取りました。

まず、職場における他者からの支援は「業務支援」「内省支援」「精神支援」の3つであると著者は言っています。その上で二つのことを研修で伝えられそうです。

一つは、「上司が単独で育成を担うな」ということです。本書の調査から、業務支援は上司が多く、精神支援は同僚・同期が多いという結果が出ています。しかし、実際の効果は、
1)上司からの「業務支援」は量として多いが、能力向上に結びついていない
2)上司があまり行っていない「精神支援」は、能力向上に結びついている
という、著書曰く「アイロニカルで興味深い結果」になっています。

ここから、職場の上司や上位者だけが単独で育成を担うのではなく、皆で育成を担った方が効果が高いことが分かります。具体的には、同僚・同期からの業務支援や、上司からの精神支援はインパクトがあるので、独自のメンター制導入や、失敗成功体験を共有する自然な場づくり、1オン1の上司の育成面談は、成長促進に実に有効であると考えます。

もう一つは、成長する職場ために「互酬性規範(ごしゅうせいきはん)の形成」が必要ということです。

職場学習風土の3要素は「互酬性規範」「オープンコミュニケーション」「学習資源」であり、
「互酬性規範」は、
「困ったときにお互い助け合っている」
「他者を助ければ、今度は自分が困っているときに誰かが助けてくれるように自分の職場はできている」
「他者を助ければ、いずれその人から助けてもらえる」
「人から親切にしてもらった場合、自分も職場の他の人に親切にしようという気持ちになる」
の4つの項目で表されています。

本書では、調査結果から互酬性規範をつくることが、全ての支援の質を高める。ゆえに、職場内のメンバー間に互酬性規範が認知されているかどうかが重要である、と結論づけています。簡単に言えば、皆が「ここは助けあいのある職場だ」と思っていることが重要なのです。

それでは、互酬性規範はどうすれば形成できるのか。それは、仕事の割り振りや、人の組み合わせを工夫するなど上司のふるまいが大きいと本書は言っています。

例えば、ある仕事をやったことがないA君とやっているB君を組み合わせて、きつい納期で仕事をさせると、助け合わざるをえない、といった実際の管理職のコメントが掲載されていました。

この辺りは、更に探求をしていきたいと思います。
(1034字)

週の風景

057 続けることの大切さ

先週はプログラム制作や新規事業の企画&事業計画策定など、引き続き忙しい週でした。

オンラインプログラムは、今は対面の3倍ぐらい制作に時間がかかっています。個々の映像をオンオフにするタイミングをはじめ、参加者の一挙手一投足のより細かいシミュレーションが必要なこと。また普段ホワイトボードに書いている図や文言も含め多くをスライドにしていることが理由ですが、進取の気性があるのか新しいことをするのは楽しいですね。スキルが伸びれば、更にスピーディーに質の高いものを制作できると思います。

さて、先週は久々にあるNPOの先輩とオンラインで対話をしました。その先輩は神奈川県の県立高校で「探求の授業」を受け持ち、先生方の授業を行いサポートをする形式で見事に成果を上げていらっしゃいます。私も同じモデルで中学校に提供したのですが非常に難しかったので、その凄さや素晴らしさが分かります。

この県立高校一本にしぼったことや、NPOをやり続けて10年経つことなどをお聞きし、あらためて尊敬の念が湧きました。これまで決して簡単な道ではなかったことも存じており、乾坤一擲といえるぐらいのプロジェクトで成果が出ていることも本当に嬉しいです。

挑戦は勿論それ自体尊いことです。でもやはり「成果」を出さないと、ですね。そのためにもやり続けること。先輩の姿からその大切さをあらためて感じました。

宗興の本棚

第143週『リーダーシップの教科書』

第143週
2020/5/10
『リーダーシップの教科書』
ハーバードビジネスレビュー編集部編 ダイヤモンド社

ブルームウィルのリーダーシップ研修を更に進化させるべく手に取った本。リーダーシップ研究が最も進むアメリカにおいて選ばれた10論文が掲載されています。積極的にプログラムに取り入れたい部分を掲載します。

第一章 「リーダーシップとマネジメントの違い」 1990年
ハーバード・ビジネス・スクール 名誉教授 ジョン P. コッター

・「変革を起こすことがリーダーシップの役割である」、
「複雑な状況にうまく対処するのが、マネジメントの役割である」と言い切っている点。リーダーシップ論の大家がリーダーシップ=変革と言い切るのは、私達も勇気をもらえます。

・「ただし、統制のメカニズムのように、正しい方向に無理やり向かわせるのではなく、達成感、帰属意識、正当な評価、自尊心、自分の人生は自分の手に握られているという実感、理想に向かって生きる力など、人間の基本的欲求を満たすことによって、である。このような感情が芽生えることで、人は深く感動したり、力強く行動したりできる。」
この一節はリーダーがビジョンを伝える際、情動に訴える必要性を補強してくれます。キング牧師の演説と共に、「景色」の明確化を促進していきます。

第4章 「共感のリーダーシップ」2000年
ロンドン・ビジネススクール教授 ロバート・ゴーフィー
BBC人事・社内コミュニケーション担当役員 ガレス・ジョーンズ

部下にやる気を出せるリーダーには、共通して4つの資質が備わっています。みずからの弱点を認める、直感を信じる、タフ・エンパシーを実践する、他人との違いを隠さない。

特に、みずからの弱点を認める部分は、メンバーを不安にさせないよう、できる部課長を演じる方が多いと感じるため、エビデンスとして伝えていきたいです。

また、最近の部課長は、メンバーに嫌わられたくない優しい方々が多い印象もあります。「厳しい思いやり」であるタフ・エンパシーもとても響くと考え、伝えていきます。

第6章 「レベル5 リーダーシップ」2001年
コンサルタント ジム・コリンズ

まあまあの企業を偉大な企業へと変革させるためには、「レベル5リーダーシップ」が必要であるという主張です。著者は、対市場平均6.9倍の利回り実績を残した11社に共通している特性として抽出しています。このレベル5リーダーシップは研修というより、私自身が進む道として大変参考になりました。

第8章 「自分らしいリーダーシップ」2007年
ハーバード・ビジネス・スクール教授 ビル・ジョージ
元スタンフォード経営大学院 講師 ピーター・シムズ
元ハーバード・ビジネス・スクール 研究員 アンドリューN.マクリーン
元シティグループ 執行役員 ダイアナ・メイヤー

・「リーダーとして成功する条件は存在しない」と言い切っているのが凄いです。自分らしさを貫くリーダーへの8つの成長ステップのSTEP4外発的動機と内発的動機は何か、の観点は研修の個人軸分析に取り入れてみようと感じました。

・「スタンフォード大学経営大学院の顧問委員化に名を連ねる75人に、『リーダーが伸ばすべき最大の能力は何か』と尋ねたところ、答えはほぼ一致した。『自己認識力』である。」これも個人軸を基軸とする私達の研修の論理補強となります。

現在この自分らしいリーダーシップを更に深堀するべく、別の著書を読んでいます。
ブルームウィルのリーダーシップ論を補強する強い学術的エビデンスとなりそうです。

以上です。学術論文は視野の拡張と、物事の深堀りを促進する素晴らしい材料です。何度も読み返します。
(1457字)