宗興の本棚

第130週『3つの真実』

第130週
2020/2/9
『3つの真実』
野口嘉則著 ビジネス社

先週、痔ろうの手術のため一泊二日で入院をしていました。ゆっくり本を読む時間ができたので、何冊か読んだ中で読了した一冊です。本書は、通塾中の天外塾同期である田中伸一さんのブログからインスピレーショが湧き手にとった本です。田中さんは人材育成のコンサルタントとして独立をしながら、ダウン症の息子さんを抱え、人生観と共に人生が変わった歩みをブログに書かれています。入院前、偶然田中さんのブログの56話を読み、胸を打たれました。https://tanaka-shinichi.hatenablog.com/entry/independencefails

本書はベストセラー『鏡の法則』の作者が書いたものです。目標必達メソッドを編み出し起業し右肩上がりに事業成長させた人材開発の社長が、大きなアクシンデントに見舞われました。その夜、ふと現れた老人との対話により「3つの真実」に気づいていく物語です。

一つ目、中心軸の話がまず印象に残りました。「人生を通じて最も望むもの」が中心軸です。これは、自分に起きてくる出来事を判断する際の「ゆるぎない価値基準」となります。中心軸が定まっていないため、その場の感情や衝動によりあらぬ現実を引き起こしていくとのこと。私自身、家族が健やかであり続けることや、母親が余生を楽しむことなど、人生を通じて望むものは「幸せの軸」として幾つか持っています。「幾つか」だからこそなのか今回「最も」という所がぐっと刺さりました。ここ最近の自身の極度な揺れから、定まっていると思っていた中心軸が未だ定まっていないことも痛感しました。孔子の言う不惑というのは、この中心軸が定まることかもしれません。

二つ目、人間の行動動機は突き詰めると「愛」か「恐れ」のどちらかしかない、ということです。例えば、社会的な成功を求めるのは、往々にして自分の存在が社会に埋もれる恐れから来ていると解釈できます。部下を叱るのはコントロールしないと、目標が未達になり上からの信頼を失う恐れから来ていると捉えられます。この状態だと社会的に成功しても、目標を達成しても、ずっと恐れに支配され幸福度は高まりません。

一方、人は愛に生きるとき、本当の幸せがもたらされる、と著者は言っています。そして、愛に生きる鍵は感謝です。感謝=愛に近く、人とつながりを感じることができるとのことです。これも大いに共感します。感謝は筋力であり、感謝をしていないと感謝力は落ちてくると私は考えています。よって毎朝感謝の手紙を読んでいるのですが、初めた約3年前と比べると自己肯定感や幸福度は格段に高まりました。様々な方々との深い「つながり」を感じることができ、これにより人生の根底の部分で支えができた感触です。何があっても大丈夫な感じというか。

中心軸を定めることと、より愛を動機に生きていくための行動として、毎朝のルーティンに加え、週末のどこか月1回1時間以上の「内観TIME」を設けることにしました。ちなみに現在の毎朝のルーティンは、4つです。①20分の瞑想②5年日記③感謝の手紙④30分の読書です。内観TIMEは、瞑想後、現在の不安や感動とじっくり向き合い、自分の心の声や感情を感じ取ること。また、今週一番感謝したいと思った方への感謝のコメントを書いていきます。既に2回行いましたが、不安感が薄まり、静かで暖かなエネルギーが湧出してきます。日々の喧騒の中で忘れがちな大切なことをじっくり「感じる」時間にしていきます。

本書の世界観は、自分の心の在り方が現実世界に投影され、出来事が引き起こされていくという非科学的なものであり、賛同しない方も多いかもしれません。若干「アヤシイ」感じ<笑>。量子や光子分野で人の想い(エネルギー)が現実化する学術研究も進んでいるようですが、科学的証明にはまだ遠い気がします。数字を含む言葉を駆使し、分けることで真理を探究した西洋思想のアプローチ。その対極にある全ては一つであり感じることで真理の体感を目指した東洋思想のアプローチ。本書は東洋思想アプローチに近く、またオットーシャーマ教授の『U理論』、天外さんの『実存的変容』とつながる話です。

すこし俯瞰的な視点でいえば、私は人類が恐れを中心に築き上げてきた社会の最終系がこの資本主義社会ではないかと感じます。そして今、人類の内的転換、つまり社会や歴史を創る前提が転換しており、有史以来最大の転換期をむかえているとも言えます。現在は、恐れから作る社会ではなく愛から作る社会へと転換する過程であり、フロー経営や、ティール組織はまさにその象徴と言えます。子供への体罰禁止なども考えてみれば、2000年以上恐れにより止められなかったことが今実現しています。資本主義の限界が叫ばれるのは、実は人類の内的転換を求める叫びなのかもしれません。
(1977字)

1 thought on “第130週『3つの真実』”

  1. 吉田さん、私のブログのご紹介ありがとうございます。
    『3つの真実』は、私が挫折から立ち直る大きなきっかけでした。多くの人に読んでもらいたいですね。ありがとうございます。

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